シレーヌ 海の魔物
海は美しく、時に残酷で恐ろしくもあります。

ドビュッシーと海



ドビュッシーは一際海に関心を寄せていた作曲家で、すばり「海(管弦楽のための3つの交響的素描)Wikipedia」というものがあったり、オペラ「ペレアスとメリザンド」にも海の情景があったり、歌曲の中にも海に関係するものが見つかります。

ここで取り上げる「シレーヌ(ノクチュルヌ第3曲 Wikipedia)」もまさにテーマが「海」で、海の魔物を描くことで海の美しさと恐さを現し、海への憧れを残してくれました。

曲の構成



3本のフルート、2本のオーボエ、コールアングレ、2本のクラリネット、3本のバスーン、4本のホルン、3本のトランペット、2台のハープ、それに8人のソプラノ、8人のメゾソプラノのコーラスが加わり、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの弦楽パートの構成で、ヴァイオリンも第一第二の中でもさらに二手に分けられたり、チェロも場所によっては二手に分かれるようになっていて、コーラスも基本的にはそれぞれが4パートに分かれているので、コーラスだけでも16パート分あることになります。さらに奏法では弦楽器の「指板の上で弾く」音色が求められたりします。さらに、縦線をあえてずらすなどかなり難易度の高い曲と言えるでしょう。

MIDIデータ化の動機と道のり


この曲の海の情景は繊細で美しく、海の近くに住むものとしてはこの曲をMIDIで作ってみたいと一大決心をして挑んだのが2002年の秋口で、ちょうど夏が終わって物寂しさが戻ってきた海に心を合わせるように音を打ち始めたものでした。

当初はSC-8850でしか音源の持ち合わせがありませんでしたし、このようにたくさんの音がいっせいに流れるものの作成と再生は困難さが半端ではなく、ましてや望むような音色にすることはほとんど不可能に近い状態でした。 それでもなんとか最後まで仕上げてみて、できる限りの調製をし、できの悪さはあっても公開に踏み切ったわけでした。

近年、ソフトウェア音源を導入し、それに使い慣れてくるにしたがって、これまでの中からできの悪いものを順次手直しを始めていて、いよいよこの曲の手直しを試みることになりました。

当初は、最低限でもSC-8850のコーラスの不満さを何とかすることが目的になりましたが、いざ始めてみるとオーケストラパートも大規模に手直ししなければならないことになってしまい、トラックを複製してはソフトウェア音源をあてがい、調整するという作業にかなりの労力を使うことになりました。総トラック数も80チャンネルを超えてしまいました。

それでは、この曲のMIDIシーケンサーの画面をご覧ください。




エクスプレッションを見ると、あたかも本当の海のうねりのように、時にぶつかり、時に同期させていることが分ります。そして、細かに分けたコーラスが音をパートに受け渡しをおこなって、ステレオ効果も十分に考慮されて、さながら海に飲み込まれるような音の世界を作っています。

明るく憧れる海の彼方から誘う優しき響き。

誘われて乗り出す海の彼方。

海の誘惑。

突然の海の豹変。

誘われたものたちを飲み込んでしまう海。

何事も無かったかのごとく静けさの戻った海とその余韻。

「海は美しく、そして恐ろしい」

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